JGTC/SUPER GTの歴史において、GT500クラスに長らく参戦している3メーカーの内どこが強いのか?という検証になります。
ただし、比較方法はシンプルに「優勝回数」としています。
本来だとこれだけでは語れませんが、わかりやすさはあるかと思います。
最多勝はやはりトヨタ/レクサス
2020年シーズン終幕後の時点で以下のようになっております。
トヨタ 77勝
日産 69勝
ホンダ 62勝
ポルシェ 5勝
マクラーレン 5勝
フェラーリ 1勝
優勝回数最多は参戦台数最多のトヨタ/レクサスで77勝。2位に初年度に戴冠している日産が69勝。3位に最後発のホンダの62勝となっています。現状3メーカーしか出走していませんが、3メーカー以外にもプライベーターのポルシェやマクラーレン、フェラーリの外車勢が計11勝を挙げています。
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3メーカーの勝利の詳細をザックリ見ていく
トヨタ/レクサス 77勝
TOYOTA | 優勝回数 | 期間 |
JZA80 | 27 | 1995~2005 |
SC430 | 24 | 2006~2013 |
RC F | 10 | 2014~2016 |
LC500 | 14 | 2017~2019 |
A90 | 2 | 2020~ |
JGTCに94年から参戦を開始したトヨタの初勝利は参戦翌年の95年。スープラ(JZA80型)で、トムスの手による勝利でした。
翌年も1勝をセルモが挙げ、97年には5勝を挙げてトヨタとして初のタイトルを獲得することになります。
翌年はまさかの未勝利に終わるものの、それ以降は未勝利のシーズンは特になく、安定した成績を上げ、JZA80が引退する2005年までに通算27勝、ドライバーズタイトルは4度獲得するに至りました。
2006年からはレクサスブランドとしての参戦となり、SC430での参戦となりました。デビューレースでまたもトムスにより勝利を収めると、その勢いもそのままにデビューイヤーでタイトルを奪取。その後2013年までの8年間に24勝を挙げ、タイトルも3度獲得する強さを見せました。
2014~16年の3年間はRC Fで参戦をし、こちらもトムスがデビューウィンを達成。タイトルこそ最終年にサードが獲得した1度に留まりますが10勝を挙げます。
2017~19年はLC500で参戦を開始。三度トムスがデビューウィンを達成し、平川亮とニック・キャシディーによる最年少タイトルという形でデビューイヤーでのタイトルも獲得します。
こちらは3年間に14勝(2017~19年はSUPER GT全24戦。そのうち2/3近くを獲得したことになる)、2度のドライバーズタイトルと圧倒的な強さで駆け抜けていきました。
(写真は2019年のWAKO’S 4CR LC500)
2020年からは再びトヨタとしての参戦となり、スープラの名前が戻ってきました。これまで通り、デビューレースをトムスが制しましたが、タイトルはあと一歩のところで獲得できませんでした。
TOYOTA | 優勝回数 | ドライバータイトル獲得回数 |
TOM’S | 27 | 4 |
セルモ | 22 | 3 |
Team LeMans | 12 | 2 |
サード | 10 | 1 |
TEAM KRAFT | 3 | |
TEAM 5ZIGEN | 1 | |
TEAM ADVAN・ツチヤ | 1 | |
TEAM WedsSport BANDOH | 1 |
せっかくなので、チームごとのデータも見てみましょう。
歴代車両全ての初勝利を手にしているトムスは27勝と4度のタイトルとタイトル獲得回数含めても最多回数となっています。続くのはセルモで22勝と3度のタイトル。3位に惜しくも19年に撤退したTeam LeMansで12勝と2度のタイトル。4位にはサードが10勝と1度のタイトルとなっています。
それ以下ではKRAFTが3勝、5ZIGEN、土屋エンジニアリング、ウェッズスポーツが1勝ずつを獲得しています。
日産 69勝
NISSAN | 優勝回数 | 期間 |
BNR32 | 3 | 1994 |
BCNR33 | 8 | 1995~1998 |
BNR34 | 7 | 1999~2003 |
Z33 | 10 | 2004~2007 |
R35(08~13) | 24 | 2008~2013 |
R35(GT-R NISMO) | 17 | 2014~ |
JGTCの記念すべき最初のレースをR32で優勝した日産は、95年の開幕戦の勝利も含む3勝を挙げ、94年にはホシノレーシングとしてタイトルも獲得します。
95年にそれまでのR32からR33へスイッチすると、98年までに8勝と2度のタイトルを挙げます。
99年からはR34へ移行します。2003年までの5年間を戦いますが、思いのほか苦戦を強いられ7勝と使用年数の割に少なく、02年には未勝利を経験します。しかしながら少ない勝利数でもデビューイヤーとラストイヤーをドライバーズタイトルで飾りました。
2004年からはZが投入されます。こちらはニスモがデビューレース勝利とデビューイヤータイトルを飾り、07年までの4年間で10勝と1度のタイトルを記録します。
2008年からは再びGT-Rが復活します。デビューレース勝利とデビューイヤータイトルをニスモが達成すると、DTM規定導入前の2013年までの6年で24勝と3度のタイトルを獲得します。
DTM規定が導入された以降は導入初年度の2014年と15年をニスモが連覇。2020年までに17勝を挙げるに至っています。
NISSAN | 優勝回数 | ドライバータイトル獲得回数 |
NISMO | 34 | 7 |
IMPUL | 15 | 2 |
KONDO RACING | 7 | |
MOLA | 6 | 2 |
ハセミモータースポーツ | 6 | |
NDDP RACING with B-MAX | 1 |
チーム別成績を見てみましょう。トヨタ/レクサス以上に直系チームであるニスモに勝利数が偏っており、日産69勝の半分に当たる34勝はニスモの手によるものという結果となりました。
またドライバーズタイトルの獲得回数もニスモがダントツで3度の2連覇を含む7度の戴冠となります。
日産内勝利数2位は、黎明期に2連覇をしたインパルで15勝。意外にも3位にはコンドーレーシングが入っており7勝。500クラスにステップアップするなり2連覇を成し遂げたMOLAは6勝、300と500を行ったり来たりすることになったハセミスポーツも6勝を挙げています。NDDP RACING with B-MAXの1勝は2019年唯一の日産車の勝利でした。
日産陣営の興味深い点としては、ドライバーズタイトルが2008年以外全て2連覇で達成されているということも挙げられます。
ホンダ 62勝
HONDA | 優勝回数 | 期間 |
NA2 | 22 | 1996~2009 |
HSV-010 | 11 | 2010~2013 |
NSX CONCEPT-GT | 2 | 2014~2016 |
NSX-GT | 15 | 2017~ |
ホンダは3メーカー中では最後発の1996年に、それまでポルシェで参戦していたチーム国光がNSXを投入したのが最初。当時はルマン参戦用に作成されたGT2車両での参戦で苦戦を強いられていた。
翌年には本格的なN-GT車両が登場し、無限+童夢プロジェクトも参戦を開始し2台体制となりました。
98年には無限+童夢が2台目を投入。中嶋企画も参戦を開始し4台体制に拡大しました。この年に中嶋企画により第4戦で悲願の初勝利を手にするとタイトル争いを最後まで繰り広げ、ホンダ全体としても3チームで5勝を挙げる大躍進を遂げます。
2000年には無限によりホンダとして初のタイトル獲得を記録します。その後NSXは2009年まで改良を続けながら参戦し、15年間で22勝と2度のタイトル獲得となりました。
2010年から4年間は市販を向け開発されながら、景気悪化に伴い開発中止となったHSV-010での参戦を開始します。NSXと違いフロントにエンジンを搭載したこの車両はデビュー2戦目で勝利を挙げると、その年のタイトルも獲得します。この4年間では通算11勝を挙げます。
2014~16年は市販前提で開発中のNSX CONCEPTをベースに参戦します。しかしながら参戦した3年間で僅か2勝を挙げるに留まります。
2017年、ついに市販化された2代目NSXをベースにした参戦が始まると、初年度から2勝を挙げ、翌年にはチーム国光が初戴冠。2020年にも再度チャンピオンになる活躍をみせ、現時点で15勝という成績を残しています。
HONDA | 優勝回数 | ドライバータイトル獲得回数 |
無限×童夢プロジェクト | 18 | 1 |
ARTA | 16 | 1 |
NAKAJIMA RACING | 14 | |
チーム国光 | 9 | 2 |
REAL RACING | 5 |
ここでは「童夢×無限プロジェクト」で統一させて頂きます。
各チームの成績を見ると、無限×童夢(またはホンダレーシング等)が勝利数としては最多の18勝を数えます。
2位に付けるのはARTAで、通算16勝とホンダとして2度目のタイトルである2007年のタイトルを獲得しています。
2010年代以降勝ち星が1度しかなく、近年ファンになった人には意外かもしれないが3位には14勝で中嶋企画が続きます。98~2002年にかけてはタイトル争いを繰り広げ、とりわけ2002年には年間3勝を挙げる活躍をみせています。
ホンダ勢最多の2度のタイトルを獲得したチーム国光は意外にも9勝と少なめ。
2007年から参戦を開始したREAL RACINGは2020年の年間2勝を含む5勝を挙げています。
外車勢 11勝
3メーカー、といいつつやはり紹介しなければならないのは外車勢。JGTC黎明期にスカイラインGT-Rやスープラと死闘を繰り広げた10勝、SUPER GT移行直前には3メーカーの激化する開発競争の間隙を縫って挙げた貴重な1勝は取り上げておきたい。
ポルシェ 5勝
“プライベーターの味方”ポルシェはGT500クラスに98年まで参戦。初勝利は94年の第3戦で、チームタイサンがグループCカーである962Cを仕立て直した車でのものでした。
翌第4戦では、今ではホンダ陣営でお馴染みのチーム国光が911で勝利を収めるなど、最終的に95年までの2年間で5勝を挙げました。
マクラーレン 5勝
96年にチーム ラーク・マクラーレンにより投入されたマクラーレンF1-GTRは僅か1年で4勝とドライバーズ・チームの2冠を達成という圧倒的な成績を残します。
しかし、それゆえに国内メーカーから反感を買いその年限りで姿を消すことになる。
だが、1999年にそれまでポルシェで戦っていたTEAM TAKE ONEが、翌年には300クラスを戦っていた一ツ山レーシングが海外から払い下げられたF1-GTRのロングテールモデルを500クラスに投入。
ほとんど開発が止まった車ではあったものの、もとの戦力の高さからTEAM TAKE ONEが01年最終戦でポールトゥウインを達成しました。
フェラーリ 1勝
国内GTではフェラーリといえば300クラスというイメージですが、こちらもタイサンの手によってF40がJGTC初年度の最終戦で勝利を挙げています。
さいごに
というわけで、結局3メーカー以外についても触れましたが500クラスの勝利についてまとめてみました。
個人的に面白く感じたジンクス的なものをあげると
トヨタ:新車初勝利は必ずトムス
日産:タイトルを獲れば9割の確率で2連覇
ホンダ:末尾に0がつく年はチャンピオン
といったところでしょうか。
おまけとして、2020年最終戦までの優勝データのまとめを用意しましたのでよろしければ……。
参考:Super GTオフィシャルサイト(リザルトより)
※写真は全て著者撮影